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デザイナー家具は建築家やインテリアデザイナーがデザインした家具のことで、美しいデザイン性や造形美が特徴です。
一世紀近く前の作品も存在し、その時代背景を反映した素材やデザインが見られます。
トーマス・リートフェルトのZIGZAGチェア(1934)
それら有名デザイナーがデザインした作品は、後世のデザイナーに影響を与え、また新たなデザインが生み出されています。
そんな歴史的にも評価されてきた家具は、ただの家具にとどまらず、アートピースとも言える存在感があります。
ル・コルビジェのLC2(1928)
ドラマやCMのセットなどで使われていることも多く、憧れる方も多いのではないでしょうか。
フランクロイドライトのTALIESIN 2(1952)
デザイナーズ家具を調べていると、「リプロダクト製品」という商品に出会います。
デザイナーズ家具は、細部まで徹底されたデザイナーの拘り、素材、歴史的背景などから非常に高価な製品が多いです。
リプロダクト製品は、見た目は同じなのにメーカーから発売されている商品と比べて圧倒的に安いのが特徴です。
これは何なの?見た目が同じなら安い方が良いんじゃないの?と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
私がインテリアにハマり数々のデザイナーズ家具を調べていた時も同じような疑問を持っていました。
実際にリプロダクト製品を購入したこともあります。
この記事では、デザイナーズ家具のリプロダクト製品も正規品もどちらも購入経験のある筆者が、リプロダクト製品について解説します。
リプロダクト製品とは
デザイナーズ家具は意匠権により、そのデザインが守られており、20年間は他の人が同じデザインを作ることはできません。(日本の場合)
意匠権はその形状に関する権利になっており、意匠権が切れた製品の形状は、パブリックドメインとして何人も(他のメーカーも)、その形の製品を自由に実施し、使用できるとなっています。
これがリプロダクト品です。
どうして安いの?合法?
工業製品的な形状を概ね忠実に再現している製品であるものの、ライセンス料やデザイン料がかからないこと、より安い素材を使うこともできるのことなどから正規品よりも安く提供できるようになります。
各メーカーがそれぞれの基準で作成しているため、同じリプロダクト製品でも値段は様々です。
オリジナルに忠実に再現している製品もあれば、似て非なる製品クオリティのものも存在します。
ここを満たしたらリプロダクト製品として認められるといった基準がある訳ではないので、品質も様々になるわけです。
このようにリプロダクト製品は、基本的には合法の製品であると言えます。(稀にリプロダクト製品メーカーが訴訟を起こされているケースもあります。)
正規品とは
正規品とはデザイナーやその権利者とライセンスを結んだメーカーから発売されている家具を指します。
ちなみにアイテムによってオリジナルから素材変更がされているアイテムもあり必ずしもオリジナル品=正規品ではありません。
デザイナーズ家具の価格は非常に高価です。
その価格はそのデザインだけに付けられているものではありません。
拘り抜かれた素材、製法、歴史的価値など様々な付加価値によって価格が決められています。
前述の通り、デザイナーズ家具の中には1世紀近く前に発表されたものもあります。
ミスファンデルローエのバルセロナチェアの発表は1929年
ハンスjウェグナーのyチェアの発表は1950年
長い年月が経ってもそのデザインは色褪せることがありません。
定価と共に中古価格も上昇傾向
定期的に価格改定が行われており、その価格は上がり続けています。
それに伴い中古価格も上昇傾向にあります。
そのため、多少高い価格で購入したとしても、その価値は保たれています。正規品の価値があってこその恩恵と言えます。
下記、デザイナーズ家具における購入当時の価格と現在の中古価格を比べてみました。
あくまで一例ですが、正規品は市場価値が保たれていることがわかります。
商品 | 2010年当時の価格 | 2023年定価 | 2023年11月時メルカリ出品額 |
イームズシェルチェア | 32550円 | 63800円 | 約23000円(2010年前後製) |
ブロックランプ | 約20000円 | 49500円 | 13000円(2011年製割れあり) |
ボールクロック | 29400円(2013年時) | 46200円 | 24000円(2015年製) |
リプロダクト製品のメリット
デザイナーズ家具のデザインが安価に楽しめる
リプロダクト製品の唯一にして最大のメリットです。
デザイナーズ家具への憧れがある人の入り口としては検討の余地があります。
お気に入り家具をお部屋に置くことで、部屋を片付けて綺麗に保つきっかけにもなります。
部屋を綺麗に保つことは、メンタルの安定や生産性向上に繋がる報告もあります。
レプリカとは言え、歴史的な建築家、デザイナーのデザインを取り入れるとやっぱり部屋の雰囲気が変わります。
デザイナーズ家具は高いので、インテリアに興味が出始めたくらいの人が、いきなり購入とはなかなかならないでしょう。
私もルイスポールセンのAJランプはリプロダクト品を使っています。
正規品は2024年8月現在18万円を超えています。
ACTUS AJランプ正規品他のデザイナーズ家具は全て正規品を使っています。ただ、このランプだけは引越し先でどうしてもこのデザインを取り入れたかったのですが、資金不足で繋ぎで買ったものでした。
本物を隣に置いたら全く別物なんでしょうが、満足してしまっています。
壊れたら正規品を買い直すと思いますが、結果的にこのリプロダクト製品の選択は自分を満足させてくれました。
※今回の製品は照明器具でしたが、これが椅子やソファーの場合にはもう少し慎重になった方が良いと思います。似たようなデザインでも僅かな素材感や背もたれの角度の違いが座り心地に大きく影響するからです。
ディスプレイ台としてや、インテリアとしてなど頻繁に座らないならまだ良いかもしれません。
デザイナーズ家具の中には、比較的安く取り入れられるものもあります。この辺りから部屋に取り入れるのもおすすめです。
リプロダクト製品のデメリット
品質がメーカーによりピンキリである。
リプロダクト品は販売店によって素材や品質が異なるため、価格も様々です。
どうしても品質はピンキリになってしまうため、しっかり調べてから買うことをおすすめします。
悪いレビューまで調べる、可能であれば実物を見ることができれば安くて良いものが手に入る可能性もあります。
※商品写真が良さそうでも、リプロダクト品の商品写真は正規品の写真を使用していることがあります。必ず良く確かめて購入することをおすすめします。
※高評価レビューはさくらレビューの可能性もあります。悪いレビューまで必ず確認しましょう。可能であれば全く同じメーカーの同じ商品の使用画像を調べられるとベストです。
本物を知っている人が見たらリプロダクトだとわかってしまう
リプロダクト製品の中には、正規品と一瞬で見分けがついてしまうものもあります。
これは、理由は分かりませんが特許の影響が考えられます。
例えばジョージネルソンデザインのボールクロックでは、マルチカラーの色順が正規品と異なります。
ボールクロックの正規品とリプロダクトの違いを検証しています。
yチェアでは特許により、完全に同じ形に作ることが禁じられているそうです。
そのためリプロダクト製品ではyチェアの絶妙な美しい形を再現することができません。
正規品はこんな感じ。違いが分かりますかね?
大きくは下記の部分が違います。正規品は横串のパーツが端に行くに連れ補くなっています。また背面部分の形状も異なります。
yチェア正規品の詳細については下記記事で解説しています。
全てがここまで明らかにわかる違いがあるわけではありません。しかし素材の違いがある以上比べたら安っぽくなってしまうのはやむを得ないでしょう。
特に僅かな形状の違い、素材感の違いが座り心地に大きな影響を与えます。
リプロダクト製品で椅子やソファーの購入を検討している方で、デザイン以外の要素も求める方は必ず購入予定の商品と同じものを試すことが重要です。
※同じリプロダクトでもこの辺はメーカーで異なります。
自身の所有欲が満たされない
デザイナーズ家具に憧れて、リプロダクト製品を購入する場合、所有欲は満たされません。
私も過去にボールクロックとAJランプのリプロダクト製品を購入しましたが、ボールクロックは結局正規品を買い直しました。
AJランプもいつかは欲しいのですが、正規品は18万円するのでいつかはと思っています。
人から見たら僅かな差でも、自分は誤魔化せません。
一見お洒落な部屋でもリプロダクトで揃えた部屋は妥協の産物に見えてしまいます。
まとめ
デザイナーズ家具におけるリプロダクト製品について、正規品とは何なのかを踏まえて解説しました。
デザイナーズ家具は何十年経っても、輝きを放ちモダンな雰囲気すらあります。
歴史を経るにつれて、優れたデザインを安価で楽しめるようになることは私達にとってとても有り難いことです。
リプロダクト製品は正規品には手が届かない人でもデザインを楽しむ選択肢を与えてくれます。
一方で、安価でデザイナーズ家具のデザインを楽しめるメリットはありますが、素材感や細かいディテールなど製作者の意図と異なる変更が加えられることもあります。
品質はメーカーでピンキリであるので、購入を検討される際はよく調べて購入ください。
私はこれまでに20点以上のデザイナーズ家具を購入してきました。その中には学生時代にお金を貯めて購入したものもあります。下記記事で正規品を手に入れる方法について解説しています。
この記事が、皆様のデザイナーズ家具に興味を持つ入り口になれば幸いです。
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